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「自民党2012年憲法改正案の問題点について」 by Assam

Assamでございます。裁判所の警告をどこ吹く風といわんばかりに、国会では、いわゆる0増5減案を、衆院で強行採決し(憲法59条2項)、改憲につなげようという流れが非常に強まっています。
しかしながら、改憲の叩き台となる、2012年自民党改憲案の問題点は、大手マスメディアでは殆ど取り上げられていません。これは背筋を凍らすべきことです。
そこで以下、同改憲案の問題点のうち、特に重要な点につき、批判的に検討します。
 
1 近代立憲主義の否定
近代立憲主義は、英国の権利章典、アメリカの独立宣言・同憲法、フランス人権宣言、1831年のベルギー憲法、1849年のオーストリア憲法、1850年のプロイセン憲法、1889年の明治憲法、1947年の現行憲法に至るまで、「君主・為政者・公権力の活動を規制して、国民の人権を保障すること。」をその使命としています。
 
ところが、2012年自民党改憲案(以下、『自民党案』と略します。)102条1項は、なんと「国民」に「憲法尊重擁護義務」を課し、同2項は「憲法尊重擁護義務」の主体から「天皇又は摂政」を意識的・明示的に除外しています(現行憲法99条参照。)。これでは、明治憲法どころか、「律令制国家」に逆戻りです。
この1点だけでも、自民党案は、もはや「近代憲法」とは言えません。
 
2 人権の固有性・不可侵性・個人の尊厳の否定
自民党案は、人権の不可侵性を定めた、現行憲法97条を明示的に削除し、同11条は現行憲法11条の「基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在および将来の国民に与へられる」という部分を削除し、自民党案12条は国民の自由及び権利につき、「公益及び公の秩序に反してはならない。」と規定しています。これは明確に「天賦人権論の否定」(起草委員の一人で、桝添要一氏の元妻の一人であり、大蔵官僚出身の片山さつき氏は、その旨、明言しています。)であり、明治憲法の「法律の留保」以上の人権侵害を認める内容です。同案13条で「個人」の尊厳を否定している点や21条2項が「公益及び公の秩序」を名目に、結社の自由を制限することを認めている点をも合わせ考慮するならば、自民党案は明治憲法よりも、人権保障の点で後退しています
 
3 事実上の徴兵制肯定
自民党案9条1項は現行憲法9条1項を巧妙に改変し、戦争放棄を「放棄」しています。さらに同案9条2項、9条の2、9条の3、及び自民党案18条が、現行憲法において徴兵制が禁止されている根拠とされてきた現行憲法18条の「その意に反する苦役に服させられない。」の部分を全部削除していることも考慮すれば、自民党案が事実上「徴兵制」を肯定(少なくとも許容)するものであることは自明です。
 
さらに悪質なことに、自民党案は徴兵を取る文明国の常識である「良心的兵役拒否」や「兵役に代わる慈善活動や納税措置」を認める規定を設けていません。要するに、かつての「国家総動員法」時代のように召集令状一つで、兵隊にとられる余地が残されているということなのです。これは本当に恐ろしいことです。
 
4 集団的自衛権の肯定
現行憲法9条は決して、死文でも、ブログラム規定でもなく、現在でも有効な規定です。
現在の政府解釈である「自衛隊は『自衛力にとどまり戦力ではない。』」という解釈も、憲法解釈として十分可能ですし、政府解釈を前提としても、日本の核武装は可能です(現実問題として、核実験すら困難な日本が、有効な核抑止力を備えることは至難と考えますが、法理論上は憲法改正なしでも、『個別的自衛権』に必要であれば、核武装は可能です。NPT条約などは脱退可能ですので。)。
 
現在の政府解釈で最も重要なのは、9条がある限り、「日本は個別的自衛権も集団的自衛権も有してはいるが、後者(集団的自衛権)は行使できない。」という点です。そのため、日本は韓国と異なり、ベトナム戦争にも参戦しませんでした。そのため、べトナムは非常に親日的です。
さらに、ソ連のアフガニスタン侵攻、湾岸戦争、イラク戦争、アフガン戦争でも自衛隊は、イスラム教徒の血を一滴も流しませんでした。それゆえ、日本はイスラムのテロから無縁でいられたのです。
 
もし、イランと米国との間で戦争が始まったときや、イエメンにアメリカが軍事介入したときに、自衛隊が参戦したら一体、どのようなことになるでしょうか?首都圏は本当に安全なのでしょうか?
デンマークの映画監督による「アルマジロ」という映画がございます。アフガン戦争に協力したデンマークの苦境を扱った作品です。ご覧になっていらっしゃらない方は、一度でいいからぜひ、ご覧いただきたいです。
 
5 福祉国家の放棄
自民党案24条1項は、家族の扶助義務を明文化しています。これは一見、もっともなようにも思えます。しかし、サッチャー時代の英国で、家族の扶助義務の肯定が、各種障碍者保護の切り捨て、労働者保護政策の見直しにつながったように、同条文は福祉主義政策の放棄につながる危険性が高いです。
 
6 国家刑罰権の強化
自民党案36条は現行憲法36条の「拷問及び残虐な刑罰は絶対にこれを禁ずる」から「絶対」を除いています。さらに既に犯罪被害者保護基本法などが制定され、我が国の犯罪被害者保護は先進諸国でも模範とされ得る程度の高水準に達しているのに、わざわざ25条の4で「犯罪被害者の人権」を明文化しています。これは、誰も反対できない「被害者の人権」を大義名分とし、警察権・検察権の濫用を許す危険があります。交通事故などでだれでも犯罪加害者になり得るし、「置換冤罪事件」「足利事件」「東電OL事件」「村木氏事件」等でも明らかなように、冤罪・誤判・違法捜査・証拠捏造は決して過去のものではありません。
 
7 財産権の制限強化
自民党案は現行憲法29条1項の「財産権はこれを侵してはならない」を「保障する」に改悪しています。財政危機が深刻化する現在、この改悪が「預金課税」「総資産課税」「相続税大増税」につながらない保証は全くありません。特権的富裕層は海外に逃げれば済みますが(欧州の例を見れば明らかです。)、貯蓄と年金で生活する高齢者の方々には大打撃となる危険があります。
 
8 緊急事態規定について
自民党案98条、99条の緊急事態規定ですが、まず、いかなる場合にも法の支配の例外を認めないアングロサクソン系諸国の憲法典にはこれに相当する規定はありません。その怖さを彼らは歴史から学んでいるからです。国家緊急権を認める大陸系諸国の関連規定(フランス、ドイツ、スイス、ロシアなど)を精査しても、自民党案ほど、強力な人権制約を認める例はありません。
 
ワイマール憲法48条と同様、クーデターや独裁の口実にされる危険性が高いです。
さらに、既に我が国では有事に備え、各種法令が整備されており、憲法典に緊急事態規定を盛り込む現実の必要性も見出し難いです。
 
有害無益な規定であり、草案から全部削除すべきです。
 
9 起草者の顔ぶれ
自民党案の起草者は、大手ゼネコン経営者のご令息で防衛大卒の中谷元委員長を筆頭に、法曹関係者が極端に少なく、(元法務官僚で、タレントから議員になった丸山和也氏や医師と弁護士のダブルライセンサーでいらっしゃる古川俊治氏が目につく程度。)2世、3世議員や、警察官僚でパチンコ利権との繋がりも指摘されたこともある平沢勝栄氏(安倍総理の元家庭教師でもいらっしゃいます。)、前述の片山さつき氏(日本会議の常連である天台宗の支持も受けられていらっしゃいます。)、川口順子氏など、官僚OB・OG議員の方が目につきます。また、前述の古川氏や中山太郎氏など、なぜか医師の活躍も目立ちます。日本医師会への政治的配慮もあるのでしょうか?
 
失礼ながら国家百年の計の観点からは、必ずしも「適材・適所」とは表しがたい顔ぶれであるように思われます。
 
10 結論
以上、管見をるる述べて参りましたが、残念ながら自民党2012年改憲案は「あまりにもお粗末」であり、正直に申しますが、「問題外」です。
 
このサイトをご覧の皆さまには、改めて申すまでもないことでしょうが、7月の参院選では賢明な投票をなさることを心よりお願い申し上げます。
 
乱文ご容赦ください。それでは失礼いたします。


   ーーーAssam先生、どうもありがとうございます。読んでいて背中が寒くなるほど怖いと思いました。特に「人権の固有性・不可侵性・個人の尊厳の否定」という部分には、特高の足音のようなものを感じました。このまま改憲(改悪憲ですが)を一つ許せば、自民党の意識の奥にある「国民の権利を軽んじる全体国家志向」のまま改憲が進み、日本は狂った国家になってしまいます。食い止めねばなりませんね! Harunaーーー

「皇室制度を危うくしかねない改憲論議」 by Assam

 ーーーお忙しくてお休みされていた、Assam先生から、寄稿がありました!
             どうもありがとうございます。ーーーーー

ご無沙汰申し上げておりました。Assamでございます。
今回、政権与党の一部から憲法96条先行改正論が唱えられており、7月の参院選の結果如何によっては現実化しかねませんので、そして、同条先行改正は、皇室制度を危険にさらしかねない危惧がございます。よって、今回はこの問題に限定して管見を述べさせていただきます。
 
1 日本の憲法96条の改正要件は厳しいのか?
政権与党からは、現行憲法96条の改正要件は厳し過ぎるとの意見が出されていますが、本当にそうなのでしょうか?
 
まず、日本と同じく立憲君主国である英国についてみますと、ご承知の通り、同国は成文憲法典は存在しません。しかし、1215年のマグナ・カルタ、1679年の人身保護法、1689年の権利章典、1701年の王位継承法、1911年の国会法、1919年の性別による欠格の除去に関する法律等が事実上の憲法典の役割を果たしており、これらの基本法はほとんど改正されることもなく、他の憲法的習律や判例法と共に極めて厳格に護られています。
 
また、同じく、英国王を元首に頂くカナダにおいては、憲法改正は①上院及び下院の決議かつ②少なくとも全州の3分の二の州で、かつ、これらの州の人口が最新の人口調査おいて全州の人口の50パーセントを有する州の立法会議のそれぞれの決議を要する(カナダ憲法38条1項)とされ、日本よりも、改正手続きは厳格です。さらに、先住民族に対する憲法改正手続には特則まで設けられています(同35条・1)。
 
では、日本が最も影響を受けている米国はどうでしょうか?
合衆国憲法5条によれば、上院と下院の3分の2の賛成を原則とし、さらに、全州の4分の3の州議会または4分の3の州の憲法会議の承認を要件としており、日本よりもずっと厳格です。
 
ヨーロッパ大陸諸国に目を転じてみましょう。
ドイツでは、憲法(ボン基本法)の改正は、「連邦議会議員の3分の2及び連邦参議院の3分の2の有効投票換算で3分の2の同意」(同79条2項)と定めており、通常の法律と全く扱いが異なります。
 
フランスでは、まず、君主制、帝政、共和制と揺れ動いた歴史を反省し、89条5項で共和制は憲法改正の対象とすることができないと明記したうえで、二通りの改正手続きを設けています。一つは政府提案ないし議員提案が両議院で同一文言で、議決されたうえで、国民投票で承認される手続き。二つ目は、国民投票に付さない代わりに国会で5分の3以上の承認を得られた場合です。とりわけ後者の厳格さが注目されます。
 
同じく、憲法改正権に限界を設けている点では、スイス憲法193条4項が「国際法の強行規定は侵害してはならない。」と明記しているのが注目されますし、スイスでは慣行上、憲法全面改正の際は慎重を期し、2回にわたり国民投票が行われています。
 
さらに日本ではプーチン氏独裁のイメージが強いようですが、意外にもロシア憲法の改正手続きは厳格です。レーニン、スターリンによる2000万から2500万(あるいはそれ以上。)ともいわれる大量虐殺を経験した国だけあって、まず、共和制と人権規定及び憲法改正手続き規定は改正できないと明記しています(135条1項)。例外的に当該部分の改正をするためには、上院下院総数5分の3以上の賛成により、別途憲法改正議会を招集したうえで、その3分の2以上の賛成を経て、かつ有権者の過半数が投票に参加した国民投票において、過半数が賛成した場合のみ改正できるとしています。それ以外の憲法条項についても、単に上院下院の賛成だけでは許されず、ロシア連邦構成主体の立法権力機関の3分の2以上の賛成を要するとしています。意外に思われましょうが、日本国憲法96条よりも遙かに厳格なのです。
 
アジアに目を移して、成長著しいお隣の韓国はどうでしょうか?
やはり、軍事政権下における人権蹂躙を経験した経緯もあり、日本よりも、手続きは厳格です。
日本の「日本国憲法の改正手続に関する法律98条2項、126条1項」は、有効投票数の下限を定めていません。つまり、政治的無関心から有効投票数が有権者の過半数に満たない場合でも、投票総数の2分の1さえ上回れば有効に改正が成立してしまうのです。
この点、韓国は憲法130条1項で在籍議員の3分の2以上の賛成に加えて、同2項で国会議員選挙権者の過半数の投票を国民投票の成立要件とし、かつ、投票者の過半数の賛成を要求しています。
 
以上、るる検討してきましたように、主要国は、アングロサクソン圏、欧州大陸圏、ロシア圏、アジア圏を問わず、日本よりも厳格な憲法改正要件を課していることが明らかになりました。
 
2 なぜ、憲法96条改正が皇室制度を危うくするのか?
現在は、安倍総理率いる与党勢力が衆院の3分の2以上を確保しておりますので、想像しにくいかもしれませんが、「政界一寸先は闇」という箴言は真理です。
仮に安倍自民党が参院選で勝利したとしても、内外の情勢から、2年後の自民党総裁選でも彼が選ばれるという保証はありません。まして、4年後の衆院選や2016年の参院選で、自民党や維新の会が圧勝できるという保証はどこにもありません。
 
郵政選挙。2009年衆院選。2012年衆院選をみても、わが国民は極端から極端にぶれる傾向があることは否めません。近い将来に、経済的破綻などから、一時的に、皇室制度に否定的な政治勢力、ありていに申せば、大統領制の採用を訴える勢力が衆参両院の過半数を獲得する可能性だってあるのです。万が一そのような事態になった時に、要件が緩められた憲法96条がどれほど危険か賢い皆さまならすぐにお判りでしょう。一時的な熱狂で、国民投票でも有効投票(上記のように、有効投票数の下限は設けられていません。)でも「大統領制」が支持され、日本が共和制に移行するという事態も夢物語とは言い切れないのです。
 
小林節慶大教授はじめ、名うての改憲論者の中にも、憲法96条先行改正案に猛反対されている慧眼の士もいらっしゃいます。
 
おりしも、皇室を取り巻く情勢が必ずしも安定しているとは評し得ない最中に、憲法96条だけを先行改正し、両院の過半数の賛成と(成立要件の下限のない)国民投票の過半数の賛成だけで、(少なくとも理論上は)あらゆる憲法改正を可能にしてしまう状況を作り出すべきではありません。これは非常に危険なことです。
 
どうか、国会議員各位におかせられましては、諸外国の佳例に倣い、憲法96条先行改正の愚だけは侵さないようにしていただきたいと念願いたします。
 
申し上げたいことは尽きませんが、今回はここまでとさせていただきます。
乱文ご容赦くださいませ。それでは失礼いたします。

 ーーー「東宮バッシング」の酷さは、皇室の自家中毒のようなものです。バッシングを信じないで、東宮ご一家の誠実さを信じてる人達にとっても、またマスコミの洗脳に染まった人達にとっても、皇室のイメージは落ちウンザリしています。共和制への機運が高まっても不思議ではないですよね。
 それに、「自民党や維新の会が圧勝」しつづけ、今度は右側にどんどん憲法を変え、戦前のような国家にされても困ります。いずれにしろ、改憲のハードルを下げてはなりませんね。 Haruna ーーー
 

Assam先生お疲れ様でした

深い考察と知識に基づいた、Assam先生の講義。
毎回楽しみにして参りましたが、先生が大変お忙しくなり、一旦お休みすることとなりました。

またお時間が出来、講義をしていたく日を楽しみにしております。
どうもお疲れ様でした。

ーーーHarunaーーー

「男系男子主義への疑問」(憲法と法の視点から) by Assam

お久しぶりです。1先月公表された政府の「論点整理」を検討しても、皇位継承についての「男系男子主義」堅持を求める意見が(政府内で)根強いことが伺えます。

しかし、男系男子主義とはそれほどまでの絶対的な要請だといえるのでしょうか?今回は、原理原則に遡って男系男子主義の疑問点や、これを前提とする上記論点整理に内在する問題点について考えて参りたいと存じます。

 

第1 天皇の地位の根拠と位置づけについて

 

1問題の所在

男系男子承継を主張される論者は、現行憲法における天皇の位置づけを、旧憲法時代のものも含め、歴史的存在としての天皇をそのまま承継・存続させるものと把握しているように見受けられます。

しかし、憲法学会においては、憲法1条について

A:旧憲法的な天皇のあり方を排斥しつつも、歴史的存在としての天皇を存続させると考える見解(承継説)

B:歴史的存在としての天皇を一度完全に否定した上で、国民主権原理に適合する形であらたな象徴天皇制を創設したと理解する(創設説)

C:天皇条項は一種の制度的保証であると理解する見解(制度的保証説)の、

3説が主張されていますが、いずれも、旧憲法時代の絶対主義的な天皇のあり方を明確に拒絶する点において共通します。

 

2上記各説からの帰結

まず、B:上記創設説からは、旧憲法以前の天皇の地位と現行憲法下の天皇の地位は断絶しているのですから、女性天皇や女系天皇を認めるのになんの支障もないことになります。創設説に立つ論者の中には更に一歩進めて、「天皇の軍統帥権が否定された現行憲法下で、女性天皇を認めていない皇室典範1条は憲法1条に違反する」という意見を主張される方もいらっしゃいます(松井茂記『日本国憲法』有斐閣)

 

次に、現在の通説と考えられているA:承継説の中でも、旧憲法と現行憲法における天皇の位置づけの変化や制憲議会の審議過程などから、現行憲法は女性天皇、女系天皇を許容しているというのが、支配的見解です。一部に、強行に男系男子承継は憲法上の要請と断定される論者もおいでですが、論拠が希薄ないし独特であり、少数説に留まります。

 

C:制度的保証説は、しばしば、男系男子主義者から自己の論拠として援用されていますが、誤解に基づく援用が多いように見受けられます。

制度的保証説は、あくまでも公法上の制度体としての皇室の特権的地位を存続させることに主眼があり、皇室の現状や特定の制度の存続を保証するものではありません。

男系派の多くは、旧宮家復帰を主張されていますが、制度的保証説の代表的論者が次のように述べていることにもっと注目すべきであります。

 

「もちろん、制度体保証は現状保証ではないから、皇室のすべての現状までが保障されるわけではなく、国家の財政的事情により少なからぬ皇族が皇籍を離脱することを余儀なくされたーこれは現実に起こった事柄だがー(引用者註:1947年の11宮家臣籍降下を指す。)としても、制度体としての天皇家のアイデンティティーが損なわれるわけではないので、違憲の問題は発生しないことになる。」(石川健治『自由と特権の距離』増補版 日本評論社 2007年 236)

 

歴史的に見ても、皇位継承制度の中核部分ともいえる、様々な制度が変容をこうむってきました。例えば、側室制度、乳母制度、養子制度、生前退位制度、(儲君の幼児期における)里子制度(表現が難しいですが。)等です。

更に、女性天皇は、明治以前に108方いらっしゃいますので、現行典範1条は少なくとも「男系女性皇族」の皇位継承資格を否定する点において、皇室の伝統と明確に抵触します。

なぜ、明治以来の皇位継承準則である男系男子主義のみが、不可変の制度的保障なのか説明が困難であるように思われます。

 

第2 国家公務員案への疑問

 

今回の論点整理は1案の女性宮家創設案も、2案の国家公務員案も、いずれも当面、男系男子承継を変更しないことを前提としており、極めて問題が多く、到底、支持できません。

1案の女性宮家創設案については、既に繰り返し問題点を指摘しましたので、今回は、政府が強硬は男系男子主義者に配慮して提案したと思われる2案の「国家公務員案」への批判を述べます。

 

1憲法141項、2項との抵触

今回の政府論点整理は、先の「有識者ヒアリング」で一部識者が提案していた「尊称保持案」を、法の下の平等・貴族制度禁止・栄典を規定した憲法14条に違反する疑いがあるとの理由で退け(この解釈は妥当です。)、代わりに婚姻により、皇籍を離脱した女性皇族を国家公務員とする案を提案しています(2案いわゆる国家公務員案)

しかし、当該元女性皇族の方は、既に皇籍を離脱され、一般国民となっている以上、特段の採用選考もなく、「元」皇族ということを理由として元女性皇族を国家公務員に任用することは、法の下の平等を定めた憲法141項、貴族制度を禁止した同2項に抵触する疑いを払拭できませんし、国民の公務就任権との関係でも問題を含みます。

 

2憲法77号、143項等との抵触

ネット言論の一部には、上記論点整理が、天皇の「ご沙汰」として、国家公務員となった元女性皇族に「皇室輔佐」や「皇室特使」の称号を与えることも「考えられないことではない。」としていることから、早とちりし、上記公務員の地位や称号を天皇の国事行為である栄典付与(憲法77)として問題なく行えると理解している投稿も散見されますが、100パーセント誤りです。

 

まず、憲法141項が法の下の平等を保障し、2項が貴族制度を禁じていること、3項が「栄典の授与は()これを受けるものの一代に限り、その効力を有する。」と規定していることから、現行憲法下の栄典は、出生に基づく身分に伴うものではあってはならず、あくまで、個人の功績を理由としてその個人を表彰するものでなければなりません。

それゆえ、「元」皇族の身分を有することを理由とする栄典授与は憲法14条、77号に反します(因みに、天皇が行っている皇族に対する叙勲などは、憲法上認められている身分である『皇族』であることを理由とするものですから、なんら違憲の問題は生じません。)

政府の論点整理もそのことは当然の前提としているから、「御沙汰」により称号を付与することも「考えられないことではない。」という玉虫色の表現に留めているのです。

 

さらに、憲法143項は、「栄典の授与はいかなる特権も伴わない」と明記していますので、仮に、「元」女性皇族への「ご沙汰」が栄典であると理解しますと、女性皇族の国家公務員任用行為はまさに、「特権」(143)の付与にも該当し、二重の憲法違反をおかすことになります。

 

なお、143項の「特権」の範囲は、実務上厳格に解されており、文化勲章受章者にそのまま年金を与えると同条違反になりかねないため、別途、「文化功労者年金法」が制定され、文化勲章受章者を別途、文化功労者として決定する手続きを採った上で年金を支給するという一見、迂遠とも思われる手続きが採られているほどです。

 

上記憲法典の規定と、現在の実務を前提とする限り、天皇の栄典付与(憲法77)として、称号の付与や国家公務員の地位を与えることはありえないことですし、実際に政府もはじめからそのような考え方には立っておりません。

 

3「御沙汰」案への疑問

「御沙汰」は主に皇室内部の事項についての天皇の裁定・指示・命令などをいいますが、今回、政府論点整理で想定されているのは、様々な皇室活動に従事する「元」女性皇族の尊称についてのもので、事実上、皇室外部にも影響が及ぶ事項ですので、政府が想定している「御沙汰」による尊称付与にも、やはり疑問が残ります。

 

4 結論

以上、長々と検討して参りましたが、政府論点取りまとめのうち、第2案である「国家公務員案」も憲法上も、法制度上も、事実上も様々な問題があり、採用することは不可能であると考えられます。

 

やはり、政府が当面は墨守しようとしている「男系男子承継」それ自体に、(少なくとも、現在の皇室の構成やあり方を前提とする限り)無理があると言わざるを得ません。

皇統の危機を回避するためにも、やはり、「男系男子承継主義」(男系女子まで排除したのは、明治以降。)の速やかな全面的見直しは避けられないと考えます。

 

冗長な記事になってしまい恐縮です。今回はここまでとさせて頂きます。それでは失礼致します。

 

 ーーー憲法解釈から論理的に考えて、現代の天皇に「男系男子主義」をあてはめることも、ましては、それを補佐する形の「女性宮家」を創設することも、憲法違反であり、制度上成り立たないのが良く判ります。

Assam先生、どうもありがとうございます。

このような知識知恵をも参考にして、皆様、「女性宮家創設」に疑問の声を上げて行きましょう! Haruna

内閣官房HP 女性宮家についての意見提出フォーム

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060121009&Mode=0

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「意見公募について」 by Assam

本日、内閣官房から意見公募手続要綱が公表されました。
 
1 概要
 
「皇室制度に関する有識者ヒアリングを踏まえた論点整理」に対する意見募集
 
案件番号 060121009
 
期間 平成24年10月9日から12月10日(月)まで。
 
 
2 意見募集の方法
 
(1)可能な限り電子メール(goiken.ronten@cas.go.jp)あて
電子メールが困難な場合、郵送も可
 
(2)電子メールの場合、内閣官房HPから意見提出フォームに移行できます。

①表題に「皇室制度に関する有識者ヒアリングを踏まえた論点整理」に対する意見と記載。
②個人の場合、氏名、住所、職業、電話番号又はメールアドレス明記。
法人又は団体の場合、名称、代表者氏名、主たる事務所所在地も明記のこと。
④添付ファイルは使用不可。
⑤平成24年12月10日(月)必着。

((2) 電子メールによる方法の補足:
電子メールによる方法のうち、内閣府電子政府のパブリックコメント:意見投稿フォームから投稿される場合には、氏名、住所、職業、連絡先などの記載は義務ではなく、任意となっております。)
 
(3)郵送の場合
あて先
〒 100-8968
東京都千代田区永田町1-6-1
内閣官房皇室典範改正準備室 「意見募集」係 宛
 
封筒表面に「皇室制度に関する有識者ヒアリングを踏まえた論点整理」に対する意見と記載。
②平成24年12月10日(月)消印有効。
③その他は、上記メールの条件と同じ。

(4)FAXによる方法
 
FAXでも投稿を受け付けるそうです。
 
内閣官房皇室典範改正準備室 宛
FAX番号 03-3581-9826
 
①表題に、「皇室制度に関する有識者ヒアリングを踏まえた論点整理に対する意見」と記載。
②平成24年12月10日(月)必着。
③その他の条件は、メール及び郵送の場合と同じ。
 
 
いままで、縷縷述べて参りましたように、極めて疑問の多い、「論点整理」です。
これを基にした典範改正は、必ずや将来、大きな禍根を残します。
是非とも、反対の意見を投稿ないし郵送して頂けますようよろしくお願い申し上げます。
 
 ーーーこんな、民意を曲げ、女性人権を貶め、日本の国際評価を堕とすような典範改正は、絶対に絶対に阻止しなければなりません! がんばりましょう。 Harunaーーー

「いわゆる女性宮家問題に関するQ&A」 by Assam

こんにちは。前回に続いて、10月5日に公表された「皇室制度に関する有識者ヒアリングを踏まえた論点整理」の問題点をご一緒に探って参りたいと存じます。
なお、今回はQ&A形式と致しました。
 
第一 全体に関する事項について
Q1
今月5日に、内閣官房より、皇室制度に関する有識者ヒアリングの論点整理が公表されました。9日からパブリックコメントの受付も始まります。
いわゆる男系男子派の方々が反対されるのは解りますが、直系長子優先主義採用を主張する立場の方がなぜ反対するのですか?
 
A1
今回の論点整理Ⅰ案は、いわゆる女性宮家創設案ですが、これは直系長子主義の採用とは全く無関係ですし、後述のように、かえって制度を混乱させると考えるからです。
 
Q2
しかし、今回の典範改正は将来における皇室活動の維持を目的としており、同論点整理13頁も、「安定的な皇位の継承を維持することは(略)引き続き検討していく必要がある」と明記していますから、まずは女性宮家を創設し、その後、時間をかけて皇位継承問題を検討すべきなのでは?
 
A2
あなたの仰ることは一見もっともなようですが、以下の理由から賛同できません。
 
①そもそも、将来皇室活動の維持が困難となるのは、皇室典範1条が皇位継承資格を男系男子に限定し、同12条が女性皇族は婚姻により皇族の身分を離れるとしているため、女性皇族の数が減少していためです。典範1条の問題と皇室活動の継続の問題は本来同一問題であり、両者を切り離して論ずること自体に無理があるのです。
②皇室活動の継続困難化は、皇族数の減少だけでなく、ご公務の肥大化も関係しており、ご公務のそれ自体の見直しも不可避なのですがそちらのほうは進んでおりません。
③皇族活動の維持を名目にしながら、ご公務経験も豊富な女王殿下方を当初から除外しており、名目との整合性に疑問が残ります。
④そして、これが最も大きな理由ですが、現在、未成年の内廷皇族はお一人だけであり、女性宮家創設が実現すると、その方も、内廷から出ることが確定します。
一度内廷の外へ出られた皇族が(例え女性宮家当主であっても)再び法改正により、皇位継承第一順位となることは容易なことではございません。
内廷皇族とそれ以外の皇族方のお立場は、それくらい異なるのです。
つまり、現状で女性宮家創設が決まれば、直系長子優先主義の典範改正は(少なくとも近い将来においては)実現しないと考えるのが自然です。
⑤典範1条に手をつけずに、女性宮家を創設すると、皇位継承資格を有しない宮家という歴史上存在したことのない宮家が生まれますが、それには様々な弊害が予想されます。この点は既に拙ブログの始めの方で検討しましたので、ご興味のある方はご覧下さい。
⑥法的裏づけを持った制度が、一度出来上がると、恒久的に予算が付され新たな利権も生まれます。女性宮家制度を創設した後、様々な弊害が生じたとしても、もはや制度の見直しは困難になります。
 
以上の理由で、典範1条に手をつけずに、女性宮家を創設することには反対せざるを得ません。
 
Q3
国権の最高機関である国会(憲法41条)の場で、典範改正を議論することだけでも意義があるのでは?
 
A3
国会は、国政に関するあらゆる問題を討議する場であり、典範改正問題に専念しているわけではありません。国会は賢人会議とは性質が異なるのです。
むしろ、将来の皇位継承順位にも影響を及ぼすことが不可避であり、国家の根幹(憲法1条)に関わるこの問題は、専門的な議論の場を設け、更に慎重な議論を重ねるべきです。
ある学者が、政治家の言葉を引用し、「典範改正のような問題は、国会提出前に議論を尽くし、国会では速やかに成立させるというのが正しいあり方だ。」と述べていましたが、至言と申せましょう。専門的な議論の場と、政治的利害の調整の場である国会(これは国会を貶めているわけでは毛頭ありません。内外を問わず、議会というのはそういう場です。)の違いを見事に言い当てています。
失礼ながら、今回の「有識者ヒアリング」は、有識者の顔ぶれや議事録の内容を精査しても、到底、後世の批判に耐え得る討議がなされたとはいえず(2005年有識者会議報告書と比べると、同じ内閣官房の仕事とは思えません。)、国会に法案が提出できる状態ではありません。
 
なんでもいいから国会に法案を提出して議論すればよいなどという主張は暴論です。
 
Q4
現行典範を前提とする限り、女性皇族は婚姻により、皇族の身分を離れてしまう。そして、現在の政治情勢下で典範1条の改正が容易に実現するとは考え難い。
現在、典範を緊急に改正する必要があるのは明らかではないか。妙齢の女性皇族方に独身を強要しようとでもいうのか?
 
A4
私も同じ危惧を抱いております。
しかし、事情は内親王殿下方に限らず、女王殿下方でも同じです。今回の論点整理は、将来の皇位継承資格拡大に含みを残しつつも、女性宮家創設資格を内親王お三方に限定しており、事実上、女王殿下方やその御子孫の皇位継承資格を将来にわたって、否定する内容です。
将来の皇位継承資格拡大を将来の検討課題とするのであれば、できる限り現状を維持して、未来の世代の判断に委ねるのが筋です。
緊急避難的に典範を改正するというのなら、女王殿下方も新制度の対象とすべきでありましょう。
国民負担増大云々は、臣籍降下制度を弾力的に運用すれば済む話です。
 
そして、当面の措置として、女王殿下方も含め、現在の女性皇族方に婚姻後も皇族としてのご身位を保持して頂くためには、典範12条を改正することだけで十分です。
勿論、それだけでは問題は解決しませんから、典範に附則として、近い将来において、皇位継承資格拡大も含めた典範改正をする旨を明記すべきです。
 
現在の困難な政治情勢下において、女性皇族方のご身位をお守りすると同時に将来の皇位継承問題を歪めないためには、これが最良の方法なのではないかと個人的には考えます。
現実問題としては困難でしょうが、今回の「論点整理」よりは、まだ弊害が少ないと愚考します。
 
今回は、論点整理Ⅰ案(女性宮家創設案)の全体的な問題点しか触れられませんでしたが、次回以降、その他の問題に触れたいと存じます。
それでは失礼致します。
 
追記:前回もお伝えしましたが、皇室典範改正に先立つパブリックコメントの受付は、来週9日火曜日から始まります。
 
 ーーーーAssam先生、いつもりがとうございます。本当に「パブリックコメントの受付」がはじまったのですね。気を引き締めて行動しなければなりませんね。 Harunaーーーー

「10月5日発表の論点整理に対する疑問」 by Assam

本記事執筆時の本日10月5日、政府は「皇室制度に関する有識者ヒアリングを踏まえた論点整理」を公表しました。
しかし、以下に述べるように、極めて疑問の多い内容です。
なお、同整理は首相官邸HP中の「その他会議」「皇室制度に関する有識者ヒアリング」の箇所に全文公開されていますので、是非ご参照ください。
論点整理の箇所自体は短いので、お忙しい方でも、ご覧になれます。
 
第1 上記論点整理中「4 検討に当たっての基本的な視点」についての疑問
 
1②「皇位継承制度の在り方の問題に影響しないものであること」
要するに皇位継承資格者の範囲を男系男子に限った皇室典範1条には手をつけないということです。
しかし、将来皇室活動が困難になると危惧されるのは、女性皇族は婚姻により、皇族の身分を離れ(皇室典範12条)皇族数が減少するからであり、典範12条がそのような規定を設けているのは、同1条が男系男子主義を採用し、女性皇族の皇位継承権を否定しているからです。
 
つまり、①男系男子主義の採用(典範1条)→②婚姻による皇籍離脱(同12条)→③皇族数の減少→④皇室活動に支障・摂政や国事行為臨時代行の適任者がいなくなる。
という幼稚園児でもわかる因果関係があります。
 
皇族数の減少と皇位継承資格の範囲の問題は切り離せない関係にあるのです。
 
2④「女性皇族の御意思の反映」
同論点整理は、女性皇族の御意思を尊重すべきとし、一律に新制度は適用しないとしています。
これは一見、もっともにも見えます。
 
しかし、皇族の意思による離脱を認めると、特定の皇族を快く思わない勢力による、皇籍離脱強要の虞があります。そのため、現行典範は11条2項括弧書は、特に不当な離脱圧力を受けやすい皇太子・皇太孫の皇籍離脱を一律に禁じているのです。
 
女性皇族について、そのような配慮を全く設けないのは疑問です。
 
第2 女性宮家創設案への疑問
同論点整理は、女性宮家創設案(Ⅰ案)を推奨し、その中で、ⅠーA案(配偶者と子も皇族の身分を付与する案)、ⅠーB案(配偶者と子供は皇族としない案)の2案を併記しています。
1 ⅠーA案への疑問
前述のように、皇位継承問題と切り離して、女性宮家を設けるため、配偶者と子は皇族ではあるが、皇位継承権はありません。
そして、典範1条は女系男子の皇位継承権も否定しているため、女性宮家当主に立派な男児が授かっても、その男児及びその子孫の皇位継承権は否定されます。
また、政府案では、女性宮家当主の子は、婚姻により、皇族の身分を失うことになります。
さらに、同論点整理9ページによれば、配偶者や子は皇族とするが、摂政就任資格は認めず、親王、親王妃、内親王、王、王妃、女王の称号認めないという方針です。これで皇族といえるのでしょうか?また、夫婦関係や親子関係が円満なものとなるか疑問です。
 
2 ⅠーB案への疑問
この案は、配偶者と子を皇族としませんので、戸籍、夫婦の氏、家族間の財産授受(皇族は憲法や関連法令により、財産授受に厳格な制限があります。)、配偶者や子供の職業選択の自由や参政権、埋葬場所や祭祀承継、宮内庁の関わり方など非常に多くの問題が生じます。
 
これについて、同論点整理は
①戸籍と氏ついては、「女性皇族は引き続き皇統譜に記載し、氏を有さず、夫と子は新戸籍を編製し、夫の氏を称す」のだそうです(同10頁)、
確かにライフスタイルとして夫婦別氏を選択する事実婚夫妻も増加しており、そのような自己決定の自由は尊重されるべきでしょうが、皇族の家族に夫婦別戸籍、別氏を強制するのは如何なものでしょうか?
更に②配偶者や子の職業選択の自由などは制限されないが、「その行動が女性皇族としての品位や政治的中立性に重大な影響を及ぼすような場合には、女性皇族の皇籍離脱の要否が議論される」と記しています。
ふざけるなと思います。愛する夫や子供との関係と皇族としての身分の相克に悩み苦しみ、皇籍離脱か離婚かの二者択一を迫られる女性皇族の苦悶に思いを致さないのでしょうか?語るに落ちるとはこのことです。本来、国家が十二分に配慮すべき切実な人権問題を、女性皇族個人の身の振り方の問題にすり替えています。
本当に卑劣だと思います。
 
なお、それ以外の個別的問題については、当局は解決策を見出せなかったのか、問題点の指摘に留め逃げています。卑怯というほかありません。
 
第3 国家公務員案への疑問
有識者ヒアリングでは、男系男子主義を墨守すべきという論者から、妥協策として尊称保持案が提案されました。
これに対し、今回の論点整理11頁は、旧典範の同様の制度は憲法14条2項で禁じられている貴族(旧華族)制度を前提とするものであったことや、臣籍降下した女性皇族に尊称保持を認め、特別待遇を認めることは皇族という特別な身分をあいまいにし、憲法14条との関係において疑義を生じかねないことから、そのまま実施することは困難としています。
男系男子主義の論者からは異論もありましょうが、これ自体は法解釈論としてむしろ自然(手堅い、内閣法制局的解釈)と申せましょう。
 
ところが、その後の提案がなんとも珍妙なのです。
同論点整理は上の箇所に続けて、突如として、婚姻により皇籍離脱をする女性皇族(内親王に限る。)には国家公務員として公的な立場を保持して頂き、皇室活動の支援をして頂くという方策も検討に値すると述べます。
 
しかし、そのような提案は、有識者ヒアリングで一度も出されたことはありませんし、以下に述べるように憲法14条との関係で疑義がございます。
 
旧憲法下においては、現行憲法14条に当たる平等権条項がなく、そのため、、日本臣民に資格に応じ等しく官吏や公務に就くことを認めた旧憲法19条が解釈上平等権条項の役割を果たしておりました。現在でも公務就任権と平等権は密接な関わりがあり、国籍や能力・適性以外の理由で公務就任資格に差別を設けることは違憲と解されています。
それゆえ、かつて内親王の身分(身位)を有していたという理由のみで、国家公務員の身分と「皇室輔佐(こうしつふさ)」や「皇室特使」といった称号の付与を認めることは、憲法14条(1項ないし3項の全て)との関係で重大な疑義を含むように思われます。
 
なお、諸外国でも傍系の王族が王室活動に従事されている例はあり、個人名は伏せますが、わが皇室にも、留学経験も豊富で、皇族としての見事な立ち居振る舞いを身につけられた女王殿下も現においでなのですから、なぜそこまで内親王に拘るのかも疑問です。本当に「国民負担への配慮」(同論点整理7頁等)だけなのか、それとも真の理由は他にあるのか不明です。
 
今回は、ごくごく一部の目に付いた点だけの問題点の指摘に留まりますが、それでもこれだけの疑問点がございます。
この論点整理は本当に、おかしなことばかりです。
 
来週10月9日火曜日から二箇月ほど、国民からの意見公募の期間を設けるとのことですので、もし、疑問点の一部だけでも共有して頂けるようでしたら、是非とも、内閣官房や同皇室典範改正準備室、内閣官房内閣総務官室などの政府機関に対して、平和的、理性的かつ紳士的に、反対ないし慎重意見を表明して頂きたいと存じます。
 
内閣官房住所〒100-8968 東京千代田区永田町1-6-1
電話(代表)  03-5253-2111
 
今回はいつにも増して熱くなってしまいましたお許し下さいませ。
 
  ーーーー棚上げか?という話も洩れていたのに、こんな改悪を本当に進めようとするとは、怒りで私も熱くなります! まず、女性宮家とその家族をなんだと思っているんだ。皇位継承権はなく、家族の絆も無視。「身分が高いようにみせかけた、非人作り」だと私は思います。 Harunaーーーー


「男系承継・後宮・宦官」 by Assam

こんにちは。今回は視点を変えて、普段は別々に考察されることの多い、男系承継と後宮、そして宦官(ちょっと怖い気もしますね。)の関係についてご一緒に考えて参りたいと存じます。
 
1 男系承継と後宮のかかわり
 
皇位や王位の承継資格を男系に限定した場合、一夫一婦制ですとどうしても安定承継に不安が残ります。
そのため、男系承継原則を採用した帝国や王国には、後宮が設けられるのが通例です(例外は、キリスト教圏である欧州とロシア程度)。
 
2 後宮と宦官
 
後宮が設けられた場合は(後述のように日本を例外として)、宦官が存在します。
今日の目から見れば、奇異にうつるかもしれませんが、皇帝や王とその家族が起居し、数多くの女性が住まう後宮には、警備や料理、力仕事などどうしても男手が必要になります。そのため宦官は必要不可欠な存在だったのです。
 
宦官というと中国ばかりが有名ですが、オスマン帝国、ビザンツ帝国、朝鮮、ベトナムなど洋の東西を問わず、後宮が置かれた王朝にはまず例外なく宦官はおりました。
 
日本では、清朝末期の宦官のイメージが強く、マイナスイメージを伴っていますが、これは清朝が宦官を志願者に限定したため、質が低下したためであり、清朝以前の中国の宦官やオスマン帝国、ビザンツ帝国の宦官の中には、異民族の捕虜や朝貢国から献上された優秀な人材が少なくなく、権勢を握った例も多いのです。
 
また、後宮の中には様々な地域出身の女性がおりましたし、王朝は諸外国の情勢収集に熱心でしたので、被制服民族や朝貢国は宦官の供給を義務付けられました。とくに、朝鮮は中国に対し宦官貢納を比較的頻繁に行っており、朝鮮出身の宦官は有能と評価されています(『明史』『明実録』)。
 
3 日本の特殊性
 
翻って考えますと、日本にも古来より、後宮は存在しますが、なぜか宦官は存在しません。
冗談交じりに、日本が中国から採用しなかったのは、「科挙」と「宦官」くらいなものであったとよく言われます。
俗説として、「去勢はもともと遊牧民族の習慣であるからだ。」といわれることもありますが、もともと農耕民族の中国、朝鮮、ベトナムでも古来より宦官は存在しますので、十分に説得的とは申せません。
 
むしろ、日本の場合、「後宮への男性の出入りが比較的自由であったから」という説のほうが説得力があるように思います。源氏物語にもあるように、日本の貴族は男女関係については世界的に見ましてもおおらかな傾向があるように見受けられます。王朝文学に記されているような「道ならぬ恋」も現実にあったのではないかと推測されます。
 
あえて詳しくは申し上げませんが、実際に古来、宮女の密通事件は文献にも記録されており、しかも必ずしも少ない数ではございません。
 
4 結びにかえて
 
私は、後宮は設けるが(古代人の感覚に照らしても残酷な)宦官制度を採用しなかった日本人のバランス感覚は優れていると思いますし、高く評価しております。
しかし、意地悪い言い方ですが、それにより「不義密通」のリスクは高まり、それがまた、平安文学という実りおおい成果をもたらしました。
 
「125代にわたる皇統譜の記載に、ただ一つの誤りもない!」「男系でない皇統は無価値!」などど異様に熱くなって豪語される方々にはもう少し、古代朝廷のおおらかさに学んで頂きたいと念願いたします。
 
それでは今回はこれで失礼致します。

 ーーーー「宦官」、男性を手術して去勢し働かせる、というのは、そうまでして、男系の血筋を守りたいという、強迫観念というようなものを感じます。王位皇位についた男性の「負の欲望」であり、自然の摂理からも大きく離れています。
中国、朝鮮では、高貴な女性が病気になっても、男性医師に診せることが無く、亡くなっていったという話も聞きます。全てにおいて「男系保守>人間の生活」なんですよね。

そういうことのなかった、正常な日本の精神性こそ「美しい日本」と考えて守って欲しいものですよ!ーーーー Haruna
 

「初心に戻って男系承継の意義を考える」 by Assam

厳しい暑さが続いておりますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
今回は、皇位継承において男系男子主義を明確に採用した明治期に戻って、男系男子主義の意義を皆さまとご一緒に考えて参りたいと存じます。
 
大日本帝国憲法と旧皇室典範が、男系男子主義を採用した背景には、切れ者官僚であった井上毅の強い意向があったとされます。
そして、近時の研究によれば、井上は①日本古来の伝統、②当時の諸外国の大勢、③国民の意識(明治期における国民意識)を重視して男系男子主義を主張したと理解されています。
翻って、今日の日本において井上の依拠した論拠は果たしてどこまで妥当するのでしょうか?以下に検証してみましょう。
 
第1 日本古来の伝統について
 
1 男系女子の皇位継承権の否定
まず、旧憲法と旧典範が10代8方の男系女子の皇位継承例があるにも拘わらず、女子皇族の皇位継承資格を一律に否定した事実について見て見ましょう。
井上らは「女性天皇は全て中継ぎで、摂政に類する存在であり、悪例もあった。」ことを表向きの理由にしています。 
しかし、歴史学の成果に基づくならば、女性天皇のなかには「中継ぎ」との評価に収まらない方もいらっしゃいますし、孝謙天皇の例をもって悪例と決め付けるのも論拠としては不十分です。
むしろ、井上らが女性天皇を、排斥した実際上の理由はは、①大日本帝国憲法11条が天皇に統帥権を付与したことから、「大元帥」(軍人勅諭)が女性であるのは好ましくないという政策的判断及び②明治期の日本が手本にしたプロイセンやオーストリアがサリカ法典に由来する男系男子主義を採用していた事実ではないかとも考えられます。
明治期に水戸学派の影響下において皇統譜の見直し(一種の歴史修正)が行われ、神功皇后が歴代から抹消された事実なども軽視すべきではありません。
 
2 男系主義について
他方、男系主義については、皇統譜上皇統は、全て男系により承継されていますので、伝統に基づくとの主張は一定の説得力があります。
しかし、今日では、崇神天皇からの実在を認める説に依拠したとしても、男系は応神天皇と継体天皇の二回にわたり交代しているという説が有力であり、125代にわたる男系承継の主張は、神話の域を出ません。明治期ならともかく、今日においても妥当な論拠と評価できるかは疑問です。
 
第2 当時の諸外国の大勢
 
旧憲法と旧典範が制定された当時は、欧州の君主国は英国を例外として、男系男子主義を採用していましたし、欧州でも女性参政権を認める国は限られていました。
また、(しばしば見落とされがちですが)、アジアにおいても、オスマン帝国、清王朝や李氏朝鮮といった男系男子主義をとる強力な君主国が存在していました。こうした国際環境の中で井上らが男系男子主義を採用したのは、むしろ適切な判断だったとすら申せましょう。
 
 
ところが、1970年代以降、少子化・男女の実質的対等への要請・女性の社会進出などを背景として、欧州の君主国では男女を問わない、直系・長系・第一子優先の王位承継が一般化しましたし、アジア地域においても君主国は減少し、現存する君主国でも女性王族の王位継承資格を認める動きがあります(実際に、皇室とも縁が深いタイ王国でも、憲法上女子王族にも王位継承権が認められています。)。
 
このような現在における世界の大勢からは、皇位継承資格を男系男子に限定していることが果たして妥当かどうか、大いに議論の余地がありましょう。
 
第3 国民の意識
  
1 法制度の変化
戦前の制度では、①国籍法上も父系血統主義がとられ、②妻は民法上無能力者であり相続権も否定され、③家督相続においても男子が優先され、④(制度上の運営により)女子は高等教育機関への入学が制限されるなど、法制度上も明らかに男子優先主義が採られていました。
 
一方、今日の社会では、①国籍法は男女を問わない血統主義が採用され、②妻は夫と対等で第一順位の相続権を有し、③諸子均分相続が法定相続の原則形態であり、④高度の教育を受ける女性もますます増加しています。
 
2 社会構造の変化
かつては、確かに、夫が収入を得て、妻が家庭を支えるという家族像が国民の間でもある程度共有されていました。
 
しかし、今日では特に若い世代を中心に、共働きが一般化し、妻は労働以外にも子供の世話や家事などにも取り組むために自由時間は夫よりも少ない傾向にあります。
厳しい雇用情勢を背景に、妻が家計を支えているという状況も珍しくはなくなっています。
もはや、日本経済は女性の力なくして成り立たなくなっています。
 
3 国民意識に変化と象徴としての天皇
このように、法制度上も社会構造も、大きく変化しそれに伴い、女性・女系天皇を肯定する意見が国民の間でも多数を占めています。
国民意識を論拠にして、男系男子主義を堅持するという主張は困難というほかありません。
 
むしろ、法制度や社会構造、国民意識の変化を無視して、(無理を重ねて)男系男子主義を墨守することは、皇室と国民との間に乖離を生じさせる危険すらあります。
特に、最近散見される「男系男子主義だからこそ皇室は尊い。」といった主張は、「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であ」る天皇(憲法1条)の在り方と明らかに矛盾するものであるといわざるを得ません。
 
第4 結論
 
以上、長々と書き連ねて参りましたが、明治期に男系男子主義が採用された趣旨や意義に遡って検討しても、今日の日本において、これを墨守すべき積極的な理由は見出し難いいと思われます。
皇統の危機を回避し、21世紀における象徴天皇のあり方を真剣に考えるならば、旧典範の男系男子主義を承継した現行典範を改正し、直系・長系・第一子優先の継承(直系長子主義)を採用するほかないと考えます。
 
おわりに
 
間違っても、一代限りの女性宮家創設や、(大正天皇の直系子孫を降嫁させる一方で)臣籍降下して久しい旧宮家男子孫を「復帰」させる等といった問題の多い手段を選ぶべきではありません。そのようなことをすれば将来必ずや禍根を残すことになるでしょう。
 
表現が過ぎる部分があったかもしれませんが、心より皇室の弥栄をお祈り申し上げます。

 ーーーー Assam先生ありがとうございます。「男系主義者」達は、日本の歴史を太古から見ようとせず、一方で、戦後の「国民の象徴としての天皇」の意味も考えようとしませんよね。確かに江戸時代、神功皇后は確かに天皇として認識されていたはずですよね。
男系主義は、伝統主義者でもなく革新者でもない、さらに天皇の資格を、飼育動物の交配のように見ていて不敬な人々だ、そう私は感じてしまいます。 Harunaーーーー

「男系だから尊い?」 by Assam

お久しぶりです。今回は、一部で強力に主張されている。「皇室は男系だから尊い。」という主張の妥当性について皆さまとご一緒に考えて参りたいと思います。
 
1 万世一系論の呪縛
 
思想史的には、「万世一系」神話が確立されたのは、それほど過去のことではございません。
江戸末期の後期水戸学派の思想が源泉と目されています。
通説的見解によれば、水戸学派は前期と後期に二分され、前期(安積澹泊、栗山潜峰、三宅観瀾など)は、天皇の「失徳」と政治権力の喪失を結び付けて論じ、個々の天皇の行動を朱子学の立場から厳しく批判していました。
ところが、もともとは町人階級出身の藤田東湖や会沢正志斎らに代表される後期水戸学派では、皇統皇位の存続と皇室の「徳」が同一視されるようになります。
儒教の論理では、「皇室は有徳だから、存続している(万世一系である。)。」となるはずなのですが、後期水戸学派では、「皇室は万世一系(万世一家)だから有徳である。」と論理が逆転してしまったのです(厳密には、これほど単純ではありませんが、後期の思想をこのように要約することも可能です。)。
 
後期水戸学派により、確立された「万世一系」論は、明治政府にも多大な影響を与え、井上毅がロエスレルの反対を押し切って起草した、大日本帝国憲法(1889年)1条「大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」に結実することになります。
 
天皇は男系だから尊いという主張をされる論者の理由付けは様々ですが、根底には、後期水戸学派と同様の問題点があるように思われます。
つまり、皇室が存続してきた様々な条件、①政治権力から距離を置いていたこと、②暴虐な天皇が極めて少なく、素行に問題のある天皇は(陽成天皇のように)廃位されたこと、③日本や中国の歴史から謙虚に学ぶ姿勢を持っていたこと、④時代の変化に柔軟に対応したこと、⑤政治権力を喪失してからも君主としての自覚を持ち続け徳を失わないよう努力される天皇が多かったことなどの重要な事実が捨象され、「皇室が続いたのは男系だったから。」という観念に囚われてしまい、そこで思考が停止してしまう危険があると考えられます。
このような観念(むしろ信仰)に酔いしれてしまうと、過去の過ちを繰り返す虞がございます。
 
国民主権の時代において、「天皇は男系だから尊い。」「男系だから連綿と続いてきた。」と考えることはむしろ危険であるとすら申せましょう。
 
2 男系承継は皇室だけではない
 
男系承継を尊ぶ論者は、継体天皇から数えても、1500年も男系で承継された皇室や王室はないと主張されます。これは一見もっともなようにも思えます。
しかし、あまり知られていませんが、儒教の祖孔子(紀元前551年から479年)や道教の指導者張魯(?から紀元後216年)の子孫は男系承継で今日まで存続しています。
中国は、王朝はしばしば交代しましたが、宗教的指導者は王朝の交代如何に関係なく、「万世一系」だったのです。
 
なお、孔子と張魯の家系は、実在可能性があるとされる10代崇神天皇(紀元後258年頃)よりも古いことになります。
世界に目を向けるならば、どこまで「世界最古の男系承継の家系である!」として胸を張れるのか疑問が残ります。
 
3 結語
 
以上のように、国民主権原理に照らしても、古今東西の例に照らしても、「男系承継だからこそ尊い。」(甚だしきは、『男系でなければ皇室が存続する意味はない。』という趣旨のご主張をされる論者すらいらっしゃいます。)。という主張がどこまで説得力があるか大変疑問です。
 
我々はもういい加減に「万世一系」神話の呪縛から自由になり、智識を世界に求めて、21世紀に相応しい皇位継承のあり方を模索すべきではないでしょうか。

 ーーー今回の「天皇と徳」のお話、とても納得がいきました。中国の易姓革命は、「天が有徳の者を天子として選ぶため」という意味があります。なのに、男系派と称する人達は、日本の皇室が長く続いていてきた理由に「徳や謙虚さ」をあげずに、男系で続いて来たからこそ偉いと強弁する。それはすなわち、天皇の人格より精子を重んじているようなもので、非常に恥ずかしいものだと思います。 Harunaーーー

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